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ジャンル 経済学

社会問題は「ビジネス」が解決する

塩澤修平・竹下智著

定価2,320円/本体2,200円
A5判上製本/208ページ/ISBN978-4-7556-1311-1
2020年6月発行

環境問題やエネルギー問題,食糧問題などさまざまな社会問題を解決するには企業の関与がどうしても必用である。寄付やボランティアだけでは永続的に問題を解決することは難しい。寄付は意義あることだが,「富の再分配」であり新しい価値を創出することはできない。
企業が利益を生むことが同時に社会問題を解決していく仕組みが求められる。そもそも企業は,社会に役立つ商品やサービスを提供することを目的に生まれ,成長してきた。日本には古くから「三方よし」という言葉がある。一般的には,自らの利益のみを追求することなく社会全体の利益を考えるという意味で使われている。
本書は,?「買い手よし」(顧客に幸福感をもたらす),?「売り手よし」(その対価として企業が利益を得る),?「世間よし」(その結果として社会問題が解決される)の「三方よし」の仕組みを経済学的理論から解明する。また,具体的事例としてさまざまな新しくユニークなビジネスのアイディアを紹介する。

第1部 従来型市場機構の意義と限界
第1章 総合社会システム
1−1 市場システム・政治システム・狭義の社会システム―市場(自助)、政治(公助)、狭義社会(共助)―
1−2 システムの適合性を判断する際の基準あるいは留意点
1−3 各システムにおける意思決定主体の行動原理
1−4 各システムにおける意思決定主体に対する評価基準

第2章 市場の仕組みと厚生経済学の基本定理
2−1 経済社会におけて生産・消費される財の性質と配分の仕組み
2−2 市場の類型
2−3 厚生経済学の基本定理

第3章 市場の失敗と市場機構補完の試み
3−1 市場の失敗の要因
3−2 公共財の存在
3−3 外部効果の存在
3−4 市場機構補完の試み―リンダール・メカニズム―
3−5 汚染者負担の原理と当事者間の交渉

第2部 技術革新による新しい財と価格設定および企業の社会的責任
第4章 新しい価格設定による誘因(インセンティブ)の付与
4−1 行動が価格に影響を与える場合の効用最大化
4−2 行動が将来の事象の確率に影響を与える場合の保険市場

第5章 企業の社会的責任と見識ある自己利益
5−1 企業の社会的責任(CSR)
5−2 社会的責任投資(SRI)
5−3 経営戦略としての企業フィランソロピーと見識ある自己利益
◎コラム 車体を軽くして、環境への負担も軽くする

第3部 ビジネスによる社会問題の解決へ
第6章 新しい技術が個人の行動を変える
6−1 健康増進型保険―健康的な生活は財政負担を削減する―
6−2 スマートフォンのデータによる無担保少額融資―銀行口座を持たない人でも融資を受けられる―
6−3 AIで子どものネット活動を見守るアプリ―ネットの子どもの自殺を減らす―
6−4 衛星コンステレーション―世界中どこからでも高速インターネットに接続―

第7章 インセンティブがエネルギー消費・温暖化ガス排出を抑制
7−1 電力のネガワット取引―節電すると報酬がもらえる仕組み―
7−2 走った分だけ保険料を払う自動車保険―温室効果ガスの排出を抑制―

第8章 食量問題を解決する最先端テクノロジー
8−1 屋内農業(植物工場)―狭い土地に人口光・少ない水・無農薬で栽培―
8−2 植物由来の代替肉―我慢しなくても肉食を減らせる―
8−3 昆虫工場―廃棄された食品からタンパク質を再生産(リサイクル)―
8−4 農業の天候リスクに対する保険―知らないうちに保険に入っている―
8−5 コーヒー豆を使わない分子コーヒー―豆が収穫出来なくても美味しいコーヒーが飲める―

第9章 社会問題解決のための資金をどうやって調達するか
9−1 米国の「オポチユニティゾーン」プログラム
9−2 オーストラリアの「アセットリサイクルリング」
◎コラム 船員育成のために「実務型練習船」を投入
◎コラム 首相 ホテルに直談判


著者紹介
塩澤修平(シオザワシュウヘイ)
慶應義塾大学大学院経済学研究科修士課程修了,米ミネソタ大学にてPh.D.(経済学博士号)取得。パリ政治学院客員研究員,慶應義塾大学経済学部教授,慶應義塾大学通信教育部長,慶應義塾大学経済学部長,内閣府国際経済担当参事官,日本NPO学会理事など歴任。現在 慶應義塾大学名誉教授,東京国際大学学長。専門は理論経済学など。
著書に『熟年人生の経済学』慶應義塾大学出版会,『現代金融論』創文社,『経済学・入門』有斐閣,『デフレを楽しむ熟年生活』講談社,『説得の技術としての経済学』勁草書房,『基礎コース 経済学』新世社,『社会貢献の経済学ーNPOとフィランソロピー』芦書房,『現代ミクロ経済学 中級コース』有斐閣(共編著),『ふるさと投資ファンド』慶應義塾大学出版会(共著),『基礎から学ぶミクロ経済学』新世社(共著)ほか多数がある。

竹下智(タケシタサトシ)
慶應義塾大学経済学部卒業,野村證券入社。大蔵省財政金融研究所(当時),野村総合研究所,野村證券(リサーチ,投資銀行部門,経営企画部,人事部)を経て現在,野村資本市場研究所主任研究員。専門は企業金融,スタートアップ,オルタナティブ投資など。
論文に「加速する米国金融機関におけるIT人材の確保」『週刊金融財政事情』(2019年3月18日号),「米国『オポチュニティゾーン』プログラムから学ぶ地方再生」『週刊金融財政事情』(2019年10月28日号),「『農業・食』×『IT』×『金融』が描く未来」『野村資本市場クォータリー』(2019年夏号),「上場・非上場の垣根を飛び越えるクロスボーダー投資」『野村資本市場クォータリー』(2020年冬号),「『起業家の宇宙時代』を支える新産業育成の仕掛け?Xプライズ,NASA,ルクセンブルクの事例?」『金融・資本市場レポート』(2020年5月)ほか多数がある。

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